婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 エメレンスは今すぐリューディアの元に駆け寄って、彼女を抱き起こしたかった。それができないのは、ブルースを拘束しているから。魔法も使って拘束しているが、両手も使ってしっかりと彼が逃げないようにと押さえ込んでいる。だから、ブルースから離れることができないのだ。

「ディア。大丈夫なら、ヘイデンたちを呼んできて。ボクはブルースが逃げないように、ここで見張っているから。急いで」

「はい……」
 立ち上がったリューディアを見て、エメレンスは息を飲んだ。それはブルースも同じだ。リューディアの顔から、眼鏡が外れている。眼鏡のない素顔のリューディア。
 だが「急いで」とエメレンスから言われている彼女は、眼鏡が無いことに気付いていないのか。

「レン。お兄さまを呼んでまいります」
 リューディアは先ほどエメレンスが使ったように、空間転移魔法を使った。やり方は、エメレンスが使ったのを見て覚えた。ぐらりと空間が歪み、気付けば事務所の中へ通じる扉の前。

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