婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 ブルースが安心できるかのようなヘイデンの笑み。だが、恐らく彼の腹の底は怒りで煮えくり返っているはず。怒りの矛先はもちろん前責任者であるフニペロだ。

「あの……」
 ブルースはやっと語り始めた。あそこで何をしていたのか。何をされていたのか。どうしてそうなったのか。
 彼が言うには、前責任者であるフニペロがここに赴任していたときから、彼による脅しが始まっていたらしい。初めは選鉱を終え、王都へと出荷する魔宝石を少しずつ間引いていたということ。つまり、魔宝石を盗んでいたのだ。それがほんの少しの量のときは、誰も不審に思わなかった。だが、その量が次第に増えるにつれ、王都からやってくる監査官の目が厳しくなってきた。それでも確固たる証拠がつかめなかったのは、もちろん帳簿も偽造されていたから。どうやら、前任のフニペロの息のかかった魔導士たちが、多く働いていたのだろう。それを示すかのように、彼が責任者の任を解かれた時、彼についてこの場を離れた魔導士たちも何人かいた。もちろん、その魔導士たちも割り出してある。
 ヘイデンが後任としてこの現場へ来てからというもの、魔宝石そのものを盗み出すことが難しくなった。それをブルースがフニペロへと伝えたところ、この現場で働く魔導士たちを減らせばいい、と言い出した。
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