愛してるなんて言わない(仮)
「サイズは?」

「トールで、あ、ホットで、…お願いします」

「ホット?暑いのに?」

「ホットで、です」

「はい分かりました」

そこまで早口に会話をして室井君は店舗のある方に駆けて行ってしまった。
私は…どうしよう、歩いて行っていいかな。
室井君の進んだ後をついて行くように歩いて向かった。

…何故、こんな状況に。
今、彼はここに居ていい人なんだろうか。リコと呼んでいた彼女は?夜、女の子が一人で歩いてたら危なくない?
聞きたいこと、というか、確認したいことは色々湧いてくるのだけど…。

あ。

「猛家さん、ここ、ここに座りましょう」

声のする方で彼は顎で椅子を指し示していた。店舗の前、歩くための広めの通路のセンターには長い椅子だったりちょっと作業が出来るテーブルだったりが程よい間隔で配置してあった。

「あまり時間はないですが、ちょっとだけいいですか?…はい、どうぞ」

「…ありがとう」

差し出されたソイラテの熱さを感じながら受け取り腰を下ろすことにした。

「あ、代金」

椅子に置きながらバッグに手をかけた。

「いいです」

「でも、そういうわけには。駄目よ」

歳上だし。ありがとうって奢ってもらうのも、だ。

「急に引き留めたお詫びです、それもかなり強引にですから。今回はいいんです」

んー、押し問答するのも、時間が勿体ないか、な。事情がよく分からないままここは奢られておくことにしようかな。

「では、ごめんなさい、遠慮せず、奢ってもらいます、次…あ」

ん"ー……次は無いんだった。直ぐ決まり事のように口をついて出てしまう。

「そう、次、会ったら奢ってください」

「…はい」

取り敢えずの返事だ。
室井君は私の仕事事情なんて知らないから、また募集があれば店に来ると思ってるんだ。
それで、だ。引き留められてまで、何があるというのだろう。
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