天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
「でも、付き合ってもないない男性の部屋に寝泊まりするなんて――」

「え、だったら付き合えばいい。っていうかまどろっこしいからもう結婚しちゃうか?」

「はぁあああああ?」

 突拍子もないこと過ぎて純菜の素の部分が出てしまう。しかももうそれを取り繕うともしなかった。

「あはは、おもしろいな」

「いえ、あのどこがおもしろいんですか?」

 純菜は信じられないものを見るような目で、壱生を見る。

「君のその感情むき出しの表情がたまらないよ。いつもそうしていればいいのに」

 ムッとしたままの純菜はそれ以上顔を見られたくなくてプイッとそっぽを向いた。

「それにこの提案は俺のためだけじゃない。ここのセキュリティが問題なんだ。またアイツらが来る可能性もまだゼロじゃない」

「そんな……」

「ルールにのっとらないから闇金だ。ちょっとやそっとこちらが脅したくらいじゃ、屁とも思ってないさ」

 壱生の言葉を聞いて怖くなる。指先から血の気が引いていくのを感じた。

 さっきのような人がまた来たらどうする? 

「職場はセキュリティがちゃんとしているけれど、家を知られているのはまずいな」

 何か考えていたような壱生が、じっと純菜の顔尾を見た。

「だから俺の部屋に来ればいい」

「え、そんな……そこまでお世話になるわけには」

「だったらどこかアテがある?」

 純菜はゆっくりと首を振る。こんな夜中に受け入れてくれる場所なんてない。

「今、俺に遠慮なんかしてる場合か? 乗りかかった船だ。助けてやるって言葉に嘘はない。それにピッピの世話も俺ひとりじゃ難しいからな」

 どう考えても壱生の申し出を受け入れることが一番いいような気がする。あのマンションならさっきのような人たちも簡単には近づけないだろう。

「あの……ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」

 純菜が頭を下げると、壱生は満足そうな顔をしてゆっくり頷いた。

 それから純菜は壱生に急かされて、急いで身の回りの物をまとめて旅行用バッグに詰めた。そしてあれよあれよという間に二時間前に来た道をまた戻ることになってしまった。

 壱生の部屋に到着したとき、日付はすでに変わっていた。寝ていたであろうピッピが出迎えてくれる。

「またきちゃった。しばらくお世話になるね」
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