天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
 わざわざピッピも一緒に来られるところを調べてくれていたことがうれしい。

中に入ると個室に案内された。ペット用の食事のメニューもあり私たちと同じように水も運ばれてきた。

「ピッピも至れり尽くせりですね」

 部屋の内装はシンプルで落ち着いた雰囲気だ。座った椅子はフカフカでとても座り心地がいい。シンプルなペンダントライトが照らすテーブルの上には小さな花瓶にバラの花が一輪いけられていた。

「勝手にイタリアンにしたけど、大丈夫だった?」

「はい。大好きです」

「苦手な食事がないなら、メニューは俺に任せてくれるか?」

「はい、お願いします」

 純菜の返事を聞いて、壱生は注文を済ませた。もちろんピッピのごはんも一緒にオーダーする。

 料理を待つ間、ピッピは壱生の足元で抱っこして欲しそうに立った。

「めずらしいな、俺のところに来るなんて」

 まんざらでもなさそうな顔をして、ピッピを抱き上げた。顔を寄せてふわふわの毛にほおずりしている。

「すごく、仲良くなりましたね」

「そりゃ、努力したからな。ピッピ」

 同意を求められたピッピだったけれど、気にもせずに壱生の顔を舐めている。

 たしかに壱生はピッピのことを理解しようと、食事や遊びも時間が許す限り工夫をしていたし、おもちゃや洋服なんかも次々と購入していた。

 傍から見ても親バカがさく裂していたように思える。

「なんだか離れがたいですよね……せっかくこんなに仲良くなれたのに」

 最初のころは、うまくお世話ができずに……それでも預かったから一生懸命に向き合っていて、寝不足で体調を崩したこともあった。

 しかし今はその努力が実を結んで、ピッピは壱生にすごく懐いていた。

「正直離れがたいよな。こんなに情が湧くなんて思ってなかった」

 ピッピに手を甘噛みされていても、嬉しそうだ。

「私はそうは思いませんでしたけど。壱成さんってドライで人と深く関わりをもたないように見えますけど、あえてそうしてるんですよね?」

「何でそう思う?」

「そんなの、二年も一緒にいればわかりますよ」

 だからこそ、純菜の実家のトラブルも忙しい中すぐに対処してくれたし、幹久が純菜のトラウマの原因だとわかったら、仕返しするかのごとく追い払ってくれた。

 本当はとても情の深い人だ。
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