天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
離婚訴訟の元クライアントで、ピッピの飼い主である本宮乃亜が現れた。
本宮自動車のお嬢様らしく、ふわふわとした女性らしい印象の人だ。透明感のある肌。柔らかそうな髪の毛。人形のように整った顔。美しいという形容詞がぴったりの人だ。
ふと隣に立つ壱生の顔を見るとわずかに眉間に皺を寄せた。しかしそれもほんの数秒で、いつもの営業用の顔に戻る。
「こんばんは。今夜お約束していましたか?」
丁寧な言葉だが壱生が彼女の登場を喜ばしく思っていないこともわかる。
「いいえ、会いたいから来ちゃいました」
小首をかしげるその姿は、自分に自信がないとできないだろう。
「そうですか、私の自宅がよくわかりましたね」
「ふふふ。好きな人の情報には敏感なんです」
壱生の口ぶりから、彼が教えていたわけではないようだ。こんなトラブルが日常茶飯事だったとなると、やはり壱生に同情してしまう。
乃亜本人はそれが壱生の迷惑になるとはつゆほどにも思っていないようだ。それがとても怖い。
「それで今日はどうしましたか?」
壱生がさりげなく純菜の前に立ち、乃亜から見えないようにする。
「実は新しいお部屋に引っ越しをしたので、ピッピちゃんを引き取りに来たんです」
「えっ」
思わず声がでてしまって慌てて口を閉じた。
そんな……昼間に電話したときは話題にもしていなかったのに。
足元で純菜の顔を見上げているピッピと目が合う。
「実は昼間先生と電話していて、ピッピに会いたくなっちゃって来ちゃったんです」
そんな……それまでは忘れていたってこと?
話の流れから、迎えに来ようと思ったら、もっと早くに来られたように感じた。
「そうですか。でもお引越ししたばかりで落ち着かないでしょうから、もう少し預かっていましょうか?」
以前の壱生ならばすぐにピッピを返しただろう。しかし彼もピッピを大切に思っているので、今の乃亜に引き渡すのが心配に違いない。
「あら、お優しい。でも今日見たらすごく賢くなっているみたいだし連れて帰ります。あ、会いたかったらいつでも会いに来てくださいね。ピッピにも私にも」
乃亜はにっこりと微笑んで手を差し出した。どうやらリードを渡して欲しいと言うことだろう。
そのリード壱成さんが選んだやつなのに。
本宮自動車のお嬢様らしく、ふわふわとした女性らしい印象の人だ。透明感のある肌。柔らかそうな髪の毛。人形のように整った顔。美しいという形容詞がぴったりの人だ。
ふと隣に立つ壱生の顔を見るとわずかに眉間に皺を寄せた。しかしそれもほんの数秒で、いつもの営業用の顔に戻る。
「こんばんは。今夜お約束していましたか?」
丁寧な言葉だが壱生が彼女の登場を喜ばしく思っていないこともわかる。
「いいえ、会いたいから来ちゃいました」
小首をかしげるその姿は、自分に自信がないとできないだろう。
「そうですか、私の自宅がよくわかりましたね」
「ふふふ。好きな人の情報には敏感なんです」
壱生の口ぶりから、彼が教えていたわけではないようだ。こんなトラブルが日常茶飯事だったとなると、やはり壱生に同情してしまう。
乃亜本人はそれが壱生の迷惑になるとはつゆほどにも思っていないようだ。それがとても怖い。
「それで今日はどうしましたか?」
壱生がさりげなく純菜の前に立ち、乃亜から見えないようにする。
「実は新しいお部屋に引っ越しをしたので、ピッピちゃんを引き取りに来たんです」
「えっ」
思わず声がでてしまって慌てて口を閉じた。
そんな……昼間に電話したときは話題にもしていなかったのに。
足元で純菜の顔を見上げているピッピと目が合う。
「実は昼間先生と電話していて、ピッピに会いたくなっちゃって来ちゃったんです」
そんな……それまでは忘れていたってこと?
話の流れから、迎えに来ようと思ったら、もっと早くに来られたように感じた。
「そうですか。でもお引越ししたばかりで落ち着かないでしょうから、もう少し預かっていましょうか?」
以前の壱生ならばすぐにピッピを返しただろう。しかし彼もピッピを大切に思っているので、今の乃亜に引き渡すのが心配に違いない。
「あら、お優しい。でも今日見たらすごく賢くなっているみたいだし連れて帰ります。あ、会いたかったらいつでも会いに来てくださいね。ピッピにも私にも」
乃亜はにっこりと微笑んで手を差し出した。どうやらリードを渡して欲しいと言うことだろう。
そのリード壱成さんが選んだやつなのに。