天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
 するといきなり隣に誰かがたった気配がした。急いで涙をぬぐって隣に立つ人物を見て驚いて声を上げる。

「壱生さん!どうしてここに?」

「俺が純菜の様子がおかしいのに気が付かないとでも思ったのか?」

 うまくごまかしたつもりだったのに、やはり壱生はすべてお見通しだったようだ。

「タブレットの検索履歴を見て、ここが大変なことになっていることを知った。なぜ、俺に言わない?」

「それは壱生さんにまた実家のことで迷惑をかけてしまうから」

「俺にとっては、何も話してもらえないことの方が悲しいけどな」

 壱生が純菜の手をとった。

「こんなに赤くなって。力入れすぎだ」

 彼の手がいたわるように純菜の手を包んだ。それと同時にいままでよりも多くの涙が純菜の頬に伝う。

「う……うぅ。来てくれてありがとう」

 袖で涙を拭いながらそう伝えると、彼は優しく頭を撫でてくれた。

 
 リビングには純菜の両親と純菜、そして壱生が座っていた。

「お久し振りです。入籍のご挨拶が電話で申し訳ありませんでした」

「いや、ふたりで決めたのだから構わないんだ。それよりも忙しい中、足を運んでもらって悪かったね」

「いえ、純菜の大切な場所なので、俺にも何かさせてください」

 壱生の言葉に宗則は小さくため息をついた。

「どうしてこんなことになったのか……特別なトラブルはなかったんだが」

「なるほど。とにかくまずはできることからやっていきましょう。こちらでも色々と調べてみます」

「ありがとうございます」

 両親が一斉に頭をさげた。

「こういうときしか役に立ちませんから、弁護士なんて」

 ここ数日両親もそして純菜も突然起こったトラブルにどうしていいかわからずふさぎ込んでいた。けれど壱生が力になってくれるとわかった途端、気持ちが前向きになった。

「本当は病院を閉鎖することも考えたんですけど、壱生くんが力になってくれるっていうならもう少し頑張るよ」

 力ないながらも表情に生気がやどってきた。

「詳細は追って連絡します」

「よろしくお願いします」

 頭を下げた両親に見送られて、純菜と壱生は自宅に向かう。


 壱生の運転は穏やかで、乗り心地がいい。壱生がトラブルの解決に手を貸してくれると聞いて、気持ちが軽くなった。

「壱生さん、今日はありがとう」
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