天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
「いや、あたりまえのことだろ。妻の実家が困ってるんだから。これからはもっと頼ってほしい。そうすることが俺の喜びでもあるんだから」

「はい」

 純菜は迷惑をかける事ばかり気にしていた。しかし壱生は何も知らないでいることの方が嫌だと言った。

「私、壱生さんのこと好きになってよかったです」

「やっとわかったか」

 信号で停車すると、壱生が人差し指で純菜の頭をつついた。お互い見つめ合って微笑み合った。



 あれから数日、実家への嫌がらせは落ちついた。

 壱生のアドバイスで動物病院のHPに警察に被害届を出したこと、今後も厳しく対処していくことを記載したら翌日からぴたっと止まった。

 こんなことで?と思うけれど愉快犯は警告で止ることも多いようだ。

 壱生が地元の警察署に働きかけてくれて防犯カメラの解析を進めてくれているらしい。

 両親も動物病院を再開して、忙しくしているようだ。以前から通ってくれている人は今回の騒動など気にしていないようで、そういう人たちに支えられて以前のように仕事に取り組んでいる。

 ただまだ一部の嫌がらせは続いているようで、犯人を特定しない限りは安心できずにいた。

 そんなある日、事務所に乃亜が姿を見せた。壱生とのアポイントはなかったはずだ。前回別れた時にあまりいい印象がなかったので警戒するが、壱生のアシスタントとして対応しなくてはならない。

「本宮さま、ただいま鮫島不在でして――」

「今日はあなたに会いにきたのよ。矢吹さん」

「私……ですか」

 何の話なのか検討もつかない。しかし大事なクライアントの関係者だ追い返すことなんてできない。

「そう、早く座りたいわ」

「失礼しました、ではこちらにどうぞ」

 空いていた応接室に案内してソファに座ってもらう。

「あの、今お茶を――」

「いらないわ。あなたもすわって」

 向かいに座るように言われて「失礼します」と声をかけて座った。何の話をされるのか緊張して待つ。

「結婚生活は楽しい?」

「え、はい。まだ慣れませんが」

 突然の質問に戸惑いながら答える。どういう意図があるのかわからない。

「そう、慣れなくてもいいのよ、どうせすぐに別れるんだから」

「え……どういうことですか?」

「だって鮫島先生は乃亜の運命の相手だから」

 にっこりと微笑む乃亜に絶句した。壱生はすでに純菜と結婚している。それなのに自分の運命の相手だというのか。
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