天敵弁護士は臆病なかりそめ妻を愛し尽くす
「最初お義父さんは犬や猫たちのためにつけたカメラがこんなことに役立つとは思ってなかったみたいだな。この子たちのおかげだって保護している犬たちに話しかけてたぞ」

「そうだったんだ……よかった」

 壱生はその映像を警察に提出するとともに、幹久のところを訪ねた。そのときの会話が先ほどICレコーダーに録音されていたものだ。

「逃げられないと思ったのかすぐに白状した。まあこの俺が逃がすつもりないけどな。純菜を泣かせたんだ。地獄の果てまでおいかえて謝らせるつもりだった」

「そこまで。本当にありがとう。でも、次からは危ないことは警察に任せてほしい」

「わかった」

 それから幹久の自供であきらかになった乃亜がこの事件の犯人だということについては、まず本人を追及するのではなく逃げ道を全部ふさぐことにした。

「本宮自動車がうちのクライアントである限り、向こうは自分たちの立場が上だと主張するだろう。だから代表に相談してこれまでの経過を伝えて契約解除する方向で、以前から話をしていたんだ」

「そうだったんだ……知らなかった」

 アシスタントとして彼の業務を把握していたつもりだった純菜は驚いた。

「それは秘密裏にすすめてたから」

「でも、本宮自動車はうちのいわゆるお得意様じゃないですか、なくなったら大変ですよね?」

「それはそうだな。でも代表は話せばわかる人だ。それに本宮自動車よりも大きなクライアントとの契約にこぎつけた。それも二社。だから忙しくなるぞ」

「すごい……そんなに忙しい中、実家の件で負担をかけてごめんなさい」

  本当ならアシスタントとしても妻としても彼を支えなくてはいけないのに、それができていないことに落ち込む。

「別に負担じゃない。SNSのトラブルについては俺が本宮のお嬢さんの対応を間違えたのが原因だし。それに俺にとっては純菜の大切なものを守るのはあたりまえのことなんだ」

 彼の言葉に涙がにじむ。何か言おうと思うけれどうまく言葉にできない。

「おれだって完璧じゃない。でも純菜の前ではヒーローでありたいと思っている」

 純菜はうんうんとうなずいて、壱生に手を伸ばす。彼も手を広げ純菜を向かい入れた。

「ほら、泣かない。仕事ができなくなるぞ」

「だって……止まらないんだもの」

< 96 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop