9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
冷たい地下牢に押し込められたのも束の間、セシリアはすぐに再び外に出された。

連れて行かれたのは、謁見の間である。

白亜の支柱がいくつも連なり、天井に見事な金装飾の施されたそこには、階段の連なる先に金の玉座が仰々しく構えている。

セシリアは両手首を縄で拘束され、玉座に向かって膝をつく形で座らされた。

最高司祭に神官たち、それから国の重鎮も数人いて、まるで汚物でも見るような視線をセシリアに向けている。

(これから、裁きが始まるのね)

処刑されることは、とうに覚悟が出来ている。

九度も人生をやり直し、ようやくのことでエヴァンの命を救えたなら本望だ。

セシリアが来て早々に、乱暴に扉が開かれた。

立っていたのは、この国の王太子エヴァンその人である。

白地に金の紐ボタンの連なるジュストコールに、紺色の下衣の長い脚。

サラリとした金色の髪に、深いグレーの瞳。

いつ見ても気品と清廉さにあふれた、王太子になるべくして生まれたような人だ。
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