9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
シリアの左手首をつかみ、じっと眺めるエヴァン。

聖杯の痣が消えているのを確認しているようだ。

「……」

重い沈黙が落ちた。

セシリアは、彼の口からすぐに死刑を宣告されると予想していた。

何せ、とことんまで嫌われている身だ。

周りの目があるし、エヴァンは怒った風を装ってはいるが、内心はセシリアと婚約破棄ができてうれしく思っているだろう。

セシリアの処分はさっさと済ませて、自分の新たな人生計画を立てたいに違いない。

地下牢に捕らえられる際、衛兵たちの会話から耳にしたところによると、新たな聖女はあのフォンターナ侯爵家の令嬢で、見目麗しく、治癒魔法を巧みに使えるのだとか。

こんなところで薄汚れた元婚約者の相手をしているより、すぐにでも彼女に会いたいに違いない。

ところがエヴァンは、セシリアの左手首をつかんだまま、思いがけないセリフを口にする。

「相手の男の名を言え」

「……」
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