9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ここで腰に帯びた剣で彼に切られようと、処刑されようと、同じことだからだ。

むしろ、しつこく相手の男について尋問されるなら、さっさと切り捨てられたい。

するとなぜか、エヴァンが乾いた笑みを浮かべる。

「なぜだ? それほど大事なのか?」

(……何をおっしゃっているのかしら)

セシリアが大事に思っているのは、エヴァンただひとりだ。

彼の命を救うために時空魔法を繰り返し、必死に方法を考えた。

だがそんなことを告白する気にはなれなかったし、告白したところで、信じてはくれないだろう。

だがそのとき、扉がバンッと勢いよく開かれる。

ヒールの音をコツコツと響かせながら入って来たのは、今日も派手派手しい赤いドレスに身を包んだマーガレットだった。

マーガレットはエヴァンに向けてうやうやしく礼をすると、嬉々とした声を出す。

「失礼いたします。この度は新聖女様のご誕生おめでとうございます」

それから床に膝をついているセシリアを見て、「あら」と今にも吹き出しそうな顔をすると、コツコツとふたりのそばに歩み、華麗な指さばきで、セシリアの手首を握っているエヴァンの手をほどいた。

「すべて聞きましたわよ。エヴァン殿下、どうかそのような汚れた女に触れるのはおよしください。もはや聖女でもなんでもない、ただの下賤の女です。謁見の間に通すのすら場違いですわ。さっさと処刑してくださいな」

しなを作り、エヴァンの腕を抱くようにして擦り寄るマーガレット。

「それよりも殿下、聞きましたわ。新たな聖女様は、まだ幼子なのだとか。きっとお身体がお寂しいでしょうから、当面は今までのように私をおそばにおいてくださいませ、喜んでご奉仕いたします。もしも身ごもったあかつきには――」

「黙れ」

ところが、甘ったるい声で言い寄るマーガレットに向けられたのは、エヴァンの射るような視線だった。
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