9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
先ほどまでの余裕に満ちた表情はどこへやら、真っ青な顔をしていて、あわあわと声にならない声を漏らしている。

セシリアは慌てて彼女のもとに駆け寄った。

「マーガレット様、どうなされたのですか?」

マーガレットはしがみつくようにセシリアの肩を持つと、瞳を潤ませ、愕然としながら声を絞り出した。

「へ、へいかが。へいかが……」

「陛下が、どうされたのです?」

「へいかが……バルコニーの柵に背をお預けになられて……そうしたら柵がくずれて、バルコニーから下に…………」

(まさか……!)

セシリアは震える息を呑み込んだ。

マーガレットをその場に残し、慌てて室内に足を踏み入れる。

高級家具で統一された室内には、ちょうど中ほどに、キングサイズのベッドが置かれていた。

その向こう、バルコニーへと通じる観音開きのガラス扉が、大きく開け放たれている。

生ぬるい夜風が、窓から吹き込んでいた。
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