9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
バルコニーにあったであろう柵の一部が、跡形もなく消えてなくなっている。
セシリアは恐る恐るバルコニーに出ると、ぎりぎりのところから下を覗き込んだ。
ちょうど真下、庭園を彩る色鮮やかな煉瓦造りの地面に、エヴァンが倒れていた。
月明かりが、横たわる彼の様子を映し出す。
後頭部からは真っ赤な血が流れ、グレーの瞳はカッと見開かれたまま、じっと宙を見つめていた。
すでにこと切れていると、すぐに分かった。
彼の遺体を見るのは、これで数回目だから――。
「ああ、なんてこと……」
セシリアは、その場にへなへなと膝をつく。
(これまでのように若くして病で亡くならないように、今回の人生では薬を開発し、そのうえ日がな地下聖堂で祈りを捧げてきたのに。今度は事故で亡くなるだなんて……)
「あ、あなたのせいですわ……」
呆然としていると、背後にいたマーガレットが泣きながらセシリアに食ってかかる。
セシリアは恐る恐るバルコニーに出ると、ぎりぎりのところから下を覗き込んだ。
ちょうど真下、庭園を彩る色鮮やかな煉瓦造りの地面に、エヴァンが倒れていた。
月明かりが、横たわる彼の様子を映し出す。
後頭部からは真っ赤な血が流れ、グレーの瞳はカッと見開かれたまま、じっと宙を見つめていた。
すでにこと切れていると、すぐに分かった。
彼の遺体を見るのは、これで数回目だから――。
「ああ、なんてこと……」
セシリアは、その場にへなへなと膝をつく。
(これまでのように若くして病で亡くならないように、今回の人生では薬を開発し、そのうえ日がな地下聖堂で祈りを捧げてきたのに。今度は事故で亡くなるだなんて……)
「あ、あなたのせいですわ……」
呆然としていると、背後にいたマーガレットが泣きながらセシリアに食ってかかる。