9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
本当に、よりにもよって、なんという男を引き当てたのだろう。

馬に揺られながら、背後にいるデズモンドをちらりと見上げる。

風に揺らいでいる黒髪と、精悍な顔立ちが至近距離で目に飛び込んできて、思わずドキッとして目を逸らした。

(この方はどうして一夜の関係を持っただけの私をわざわざ妃として迎えに来てくださったのかしら? 次期皇帝なのだから、女性など引く手あまたでしょうに……。そういえば昨夜、女性と関係を持つのは初めてと言っていらしたけど、きっと冗談ね、そんなわけないもの。噂通りのあくどい皇帝なら、私が元聖女だと気づいて、何かを企んでいる可能性もあるわ)

彼の人間性にはたしかに惹かれている。

だが八度の人生で何度も耳にした、デズモンドの悪い噂を思い出し、セシリアはまた身を硬直させた。

冷酷で、残虐で、人を道具のように扱う無慈悲な皇帝。

後宮には妃があふれ、女も使い捨ての人形のように扱う。
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