9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアは複雑な気持ちのまま目を閉じ、両手を合わせて祈りの姿勢をとると、一心に念を込めた。

身体中に熱がみなぎり、まばゆい光に包まれる。

セシリアを形作るすべてが目に見えない数多の粒子となって、時空の狭間に溶け込んだ。

(この魔法を使えるのは、とうとうこれで最後だわ。次こそ失敗しないように、心して生きないと)

押しつぶされるような重苦しい感覚が、身体中に走る。

だがある一瞬で、ふわっと軽くなった。

直後身体を襲った、ひどい倦怠感。

九度目ともなると、この独特の不快感にも、大分免疫がついてきた。

目を開けると、先ほどまでいた夜のバルコニーではなく、真昼の渡り廊下に立っている。

太陽光に照らされ、庭園の木々の葉が、青々と光り輝いていた。

(うまくいったわ)

ホッと胸を撫で下ろすと、セシリアは荒い息をついた。

この魔法を使い始めた当初は何ともなかったのに、ここ数回は疲労が激しい。
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