9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
そんなデズモンドを、ベンジャミンはにこにこと悟ったような笑顔で見つめている。

「子の自立を見守る母親のような目で見るな」

「だって、本当にセシリア様がお好きなんだな~、と微笑ましくなっちゃいまして。ところで、ご存じでしたか?」

「何をだ?」

「遥か彼方、南大陸にあるダンストプという小国に、死を招く恐ろしい疫病で何人も死者が出ていることを。その疫病は、一年前まで長期風邪としてそれほど深刻な症状を見せていなかった病が、変異したものだそうですよ。地味に長引く頭痛が特徴だったそうです」

デズモンドは、廊下の中腹で思わず足を止める。

「何だと……?」 

振り返ると、彼らしくない聡明な目をしたベンジャミンと目が合った。

「猛威を振るう前、長期風邪の段階で収束させていれば、幾人もの命を救えただろうという医者の見聞録を読みました。セシリア様は、人知れずこの国の未来をお救いになられたのかもしれませんね」
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