9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
青天霹靂の事態に、国の重鎮たちは、グラハムがデズモンドを妬んで兄弟関係に亀裂が入るのではと懸念したという。

だが予想に反し、グラハムの態度は、実にあっけらかんとしたものだった。

そしてデズモンドを妬むどころか、面倒な役を引き受けてくれてありがたいと、繰り返し称賛してくれている。

父の突飛な発言により、王宮内で第一皇子派と第二皇子派による紛争が勃発するのではとの見方まで出ていたが、すべてはグラハムの態度で立ち消えた。

そんな風に、物腰が柔らかく、頭脳明晰な兄を、デズモンドは心から尊敬している。

「ところで、噂は聞いているよ。お前が異国から連れ帰ったあの令嬢は、ずいぶん活躍しているそうじゃないか。なんでも自国で学んだ薬の調合方法を、市井の薬師たちに広めようとしているんだって? たいしたものだ」 

「はい。セシリアは、俺の想像以上によくやってくれています」

「そうか。きっと、いい后になるだろうね」

 朗らかな笑みを浮かべるグラハムに、デズモンドは深く頷き返した。

「俺もそう思います」

「君たちの幸福を心より願っているよ」

「ありがとうございます、兄上」

 尊敬する兄からの祝福を、デズモンドは満ち足りた気持ちで受け止めた。
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