9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
渡されたのは、草色のワンピースに編み上げベスト、頭を覆う頭巾に木靴という、まるで町娘がするような衣装一式である。

これまでの繰り返し人生でも、一度もしたことがないような格好だった。

「これが、昨夜言われていた衣装? いったいどこに行かれるつもりなのかしら」

「どこなのでしょうね? 皇太子殿下のことだから、きっと素敵なデートを計画されているのだと思いますよ。何だかワクワクしますね!」

エリーは、意気揚々として、さっそく草色のワンピースをセシリアに着せにかかっている。

(デート……。そっか、そういうことになるのよね)

セシリアは、デートというものとは無縁の人生だった。

エヴァンとも、一度もしたことがない。

初めての経験にドキドキと胸を高鳴らせながら、セシリアは身支度を終え、どこからどう見ても立派な町娘が完成する。

間もなくすると、部屋までデズモンドが迎えにきた。
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