9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
エヴァンのことをこの世の誰よりも深く愛していたから、あえて不貞を働く道を選んだのだ。 

(それで彼女は、俺に抱かれたがったのか)

胸に、太い杭が打ち込まれたような心地がする。

(愛する者を救うために、命を削って人生をやり直し、操を捧げる覚悟をする。これほど壮大な愛を、俺は知らない)

セシリアにそれほどまで愛されていたあの王太子が、心の底から憎い。

(そして彼女の心は、おそらくまだ王太子のもとにある)

先ほど、夕暮れの街を丘から見下ろしながらキスをした際、途中で我に返ったように拒絶されたのを覚えている。

――『どうした?』
――『あの、私……』
――『何だ。言いたいことがあるなら言え』
――『私、あの方が――――』

――エヴァンが忘れられない。

セシリアは、きっとそう言いたかったのだろう。

デズモンドよりも遥かに長い期間、彼女はエヴァンと時を共有してきたのだ。
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