9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
まずやらなければならないのは、城案内だった。

エヴァンを従え、広大な城の中を歩き、要所で説明を加えていく。

エヴァンは感心するようにあたりを眺めていたかと思えば、セシリアをじっと見つめているときもあった。

そのグレーの瞳にひたむきに見つめられると、思わずドキリとする。

すぐに目を逸らしても、エヴァンの方からは変わらず視線を感じて、セシリアは何度も戸惑った。

(エヴァン殿下は、いったいどうされたというのかしら)

エヴァンは、セシリアを愛さない。

人としても好んでくれない。

何をどうあがこうと、セシリアを忌み嫌うことしかできない。

九度のやり直し人生の中で、セシリアはそのことを嫌というほど学んだ。

だが友好的な目を向けられている今は、忌み嫌われているようには感じない。
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