9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
もう過ぎ去ったことを、新たな関係が出来つつある今、エヴァンはなぜ蒸し返そうとするのか。

するとエヴァンが、セシリアから視線を外さないままに、こちらに近づく。

「俺は君を失ったことを、後悔している」

「……」

セシリアは、今度こそ言葉を失った。

まさかあれほど忌み嫌われている彼から、そんなことを告げられるなど、想像していなかったからだ。

伸びてきた手が、セシリアの頬に触れた。

「殴って悪かった」

「いえ、もう別に……」

「俺たち、もう一度やり直せないか? 君を愛しているんだ。君にその意思があるなら、どうとでもする」

今目の前にいる、エヴァンそっくりな彼は、いったいどこの誰なのだろう?

セシリアは信じられない気持ちで、つくづく目の前の気品あふれる貴公子を眺めた。

(何をおっしゃっているの? どんなに歩み寄っても、決して心を開いてくれなかったのに。どうして今更――)
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