9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(ああ、なんてこと……)

セシリアは、ふらつく足でデズモンドに駆け寄った。

血の気を失った彼の頬に、恐る恐る触れる。

温もりに触発されたかのように、デズモンドがうっすらと目を開けた。

力を失った水色の瞳に、今にも泣きそうなセシリアの姿が映る。

「セシリア……。俺は愚かだな……。真の敵に……気づくことができなかった……」

血まみれの口を苦しげに開き、どうにか言葉を繋ぐデズモンドの姿に、いたたまれなくなる。

「すぐにお医者様を……。ああ、私に治癒魔法が使えたら……」

「いいんだ、セシリア……。俺は間もなく…逝くだろう」

「そんな……っ。いやです……っ!」

目からとめどなく涙があふれ、頬を濡らしていく。

デズモンドは最後の力を振り絞るように手を伸ばすと、そんなセシリアの髪を、優しく撫でてくれる。
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