9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「セシリア」

愛しい人の声が背中からかけられ、セシリアは振り返る。

「聞いていたぞ。あの男に、もう未練はないのだな」

傷ひとつないデズモンドが、セシリアにもの言いたげな視線を向けていた。

つい先ほど、息絶えた彼を見たばかりなだけに、彼の元気な姿が身に染みる。

セシリアはぶわっと目に涙をあふれさせると、無我夢中で駆けより、デズモンドに抱き着いた。

デズモンドは持っていた剣を地面に落とし、セシリアの想いに応えるように熱い抱擁を返す。

「はい。未練など、とっくに消えています。私が愛しているのは、デズモンド様、あなただけです」

何のためらいもなくその言葉が口をついて出てきた。

こうして、生きている彼に想いの丈を伝えることができて、震えるほどにうれしい。

デズモンドは腰に回した手をピクリとさせると、セシリアの胡桃色の髪に深く顔をうずめた。

熱い吐息が、耳をかすめる。

彼が生きている証である温もりが、涙があふれてやまないほどに愛しい。
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