9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「そうか、それはうれしいことを言ってくれる。俺も君を愛している。この世の何よりも深く」

思いがけない言葉が返ってきて、セシリアの心は、これまでの人生でも経験がないほど歓喜した。

だが、ジゼルのことを思い出して躊躇する。

「その、お気を遣っていただかなくても大丈夫です。デズモンド様は皇帝となられる身、何も一番になりたいとは思っていません」

「どういう意味だ?」

甘い空気から一転して、デズモンドの声が冷ややかになった。

顔を上げると、冷徹な眼差しを浮かべた水色の瞳と目が合って、セシリアは背筋を震わせる。

「その、デズモンド様にはジゼル様がいらっしゃるので……」

「ジゼル? なぜ彼女が出てくる?」

デズモンドは怪訝そうに眉を上げたあとで、「もしかして、あの噂を信じていたのか」と嘆くようにつぶやいた。
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