9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
黒く艶やかな髪に真昼の空のような水色の瞳を持つ、類まれなる美丈夫。

そして、この大陸最大の規模を誇る、オルバンス帝国の皇帝となる男――。

頬を赤く染めたセシリアを見て、自分の想いが通じたと悟ったのだろう。

デズモンドが、ホッとしたように微笑んだ。

それからセシリアは、ある違和感に気づく。

いつの間にか、グラハムの姿が消えているのだ。

たしか最後に見たとき、彼はベンジャミンに羽交い絞めにされていたはず。

「そういえば、グラハム様は……?」

「一足先に、僕が地下牢に連行いたしました。これ以上よからぬことを思いつかぬうちに」

(つまりこのわずかな間に、グラハム様を連れて城の地下牢に行き、また王城敷地の外れにあるこの森に戻ってきたってこと? 城までは距離があるから、二十分はかかるはず。そんなこと、不可能だわ)

動揺しつつも考えを巡らせたセシリアは、ある結論に行き着いた。

「もしかして、風魔法を使ったのですか……?」
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