9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
一度にいろいろなことが起こりすぎておざなりにしていたが、セシリアは先ほど、ベンジャミンが魔法を使う姿をたしかに目撃した。

重い物を吹き飛ばす風魔法に、大地に標的物を取り込む土魔法。どちらもかなり難易度の高い魔法だ。

そして、それらの魔法を使っている際、黒のローブの袖からのぞいた彼の手首に浮かんだ不思議なものを見てしまった。

――金色に輝く、メビウスの形の痣を。

「――あなたは、聖人だったのですね」

「いやあ、バレちゃいましたか」

てへへ、と軽い調子でベンジャミンが頭を掻いた。

オルバンス帝国の国教であるユルスツク教。

その使者と云われる聖人は、エンヤード王国の聖女と違って、存在が不確かだ。

ふたりのやり取りを、デズモンドも驚きの目で見ていた。

「聖人だと? お前がか?」

デズモンドに、ベンジャミンが気まずそうな視線を向ける。
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