9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
心のこもった声の響きに、ベンジャミンがハッとしたように目を見開き、それから頬を赤くする。

「そして、これからも近くにいてくれ。俺には、お前の力が必要だ」

「……御意」

恥じらうように目を伏せるベンジャミン。

そのあとで立ち上がった彼は、屈託のない笑みを浮かべる、いつもの彼に戻っていた。

「それにしても皇太子殿下は贅沢ですね。聖人と聖女、両方近くに置いているんですから。きっとこの世界の長い歴史の中でも、前代未聞の出来事ですよ。ね、セシリア様。そう思いませんか?」

「あ、はい。でもその、私はもう聖女ではないですし……」

「厳密にはそうかもしれませんが、デズモンド様にとっては聖女も同然ですよ! 何せあの頑固な女嫌いを瞬く間に直してしまったのですから」

ハハハ、とさも面白そうに笑っているベンジャミン。

先ほどまでの雰囲気とのギャップが凄すぎて、セシリアはぎこちない笑みを返すことしかできない。

そして心の中で、密かに恐れおののいたのだった。

(この世で一番敵に回したらいけないのは、おそらくこの人だわ)
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