9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
動揺するセシリアには構わずに、デズモンドはセシリアの手を唇に寄せ、焦がれるような眼差しを向けてきた。

「俺がどれほど耐えてきたか、君は知る由もないだろう? その極上の身体を知ったあとでは、隣にいながら触れることも叶わないのは地獄に等しい」

「そんな風には、まったく見えませんでした……」

「そうか、それであれば、俺の演技力もたいしたものだな。実際はいつもこうして君と向かい合いながら、あの日の夜のことを思い出していた。君の肌の柔らかさや、甘い声、そして温もりを。ついでにいうと、君の裸を思い出して、毎夜のように自分を慰めている」

生々しい言葉を立て続けに並べられ、セシリアは羞恥でおかしくなりそうだった。

「抱いていいのか? それとも駄目か?」

甘い囁きとともに見つめられながら、手の甲にちゅっと口づけられた。

そのキスの仕方が何とも厭らしくて、身体の奥が熱くなる。

「……いいです」
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