9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
女をこっぴどく嫌っていた彼に、これまで女性の気配は皆無だった。

それどころか、十代の頃は、女が近寄ってきただけで嘔吐するほど生理的に受け付けなかったのだ。

だが、彼はついに運命の相手を見つけた。

エンヤード王国の子爵令嬢、セシリアである。

元聖女という類まれな肩書きを持つ彼女にデズモンドは一目ぼれ同然に恋をし、人が変わったようにぞっこんになっていた。

セシリアを喜ばせたいと思い悩み、元婚約者に激しい嫉妬心を抱き、想いが通じ合った後は毎夜ベッドを共にしている。

そんな彼の変化を、ベンジャミンはあたたかい目で観察してきた。

彼女を愛しく思うがゆえ、さらに深みを求めるようになったのだろう。

「そういった指南書がいくつか図書館にあります。あとで持ってきましょう」

「指南書があるのか? それは助かる。じっくり学ぶとしよう」

デズモンドは瞳を輝かせてそう答えたが、ベンジャミンはふと、今朝すれ違ったセシリアの様子を思い出した。

(そういえば絶えずあくびをしていて、かなり眠そうなご様子だったな)
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