9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
『母上……』

巻き戻ったのは、エロイーズ妃が亡くなった直後だった。

ベッドに横たわる母の遺体を前に、デズモンドが目に涙を浮かべて震えている。

(デズモンド様が生きている……!)

ベンジャミンはとっさに、デズモンドをきつく抱きしめた。

そして泣きじゃくる彼の頭を、繰り返し撫でたのだった。

『これは、繰り返し暗黒魔法をかけられた魔法班だ……。いったい誰がこんな巧妙な技を……』

エロイーズ妃の遺体を見聞した父の大魔導士エンリケが、言葉を失っている。

ベンジャミンはデズモンドを抱きしめながら、銀色の瞳を鋭く光らせた。

(大丈夫です、デズモンド様。僕が必ず、あなたをお守りします)
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