9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
その日の夜。
ギイ……。
アマンダ妃の部屋で寝支度を終えた侍女が退室する際、ベンジャミンは風魔法を使い、誰にも気づかれないよう中に忍び込んだ。
カーテンの陰に隠れ、ベッドの上で手鏡を持ち、自らの顔をうっとりと眺めているアマンダ妃を見つめる。
『我ながら素晴らしい魔法だったわね。邪魔な女が消えてくれて本当にせいせいしたわ。次はあの息子の番ね』
鼻歌を歌うようにそう呟いていたアマンダ妃だったが、急にこちらに顔を向け、視線を鋭くする。
『そこにいるのは誰!?』
さすがは巧妙な暗黒魔法を操るほどの高い魔力の持ち主である。
高魔力の者が、人の気配に敏感だというのは本当のようだ。
満を持したように、ベンジャミンはカーテンの陰からゆらりと姿を現した。
全身をこわばらせて警戒していたアマンダ妃だったが、侵入者が大魔導士の愚息と知って安心したのか、肩の緊張を緩める。
『なんだ、あなただったの。どうやって忍び込んだの? 能力もない癖にデズモンドの腰巾着をしているようだけど、やることなすこと鼠のようね』
鼻で嗤うアマンダ妃。
いつもは寛容な女性を演じている彼女だが、人の目がないせいか、はたまたどうでもいいような子供相手だからか、本性を隠す様子がない。
それからアマンダ妃は、急に聖母のようなおおらかな表情になり、『今聞いたことは秘密にしておいてちょうだい』と甘い声を出す。
『デズモンド亡きあとは、あなたをグラハムの側近に据えてあげる。落第魔導士と罵られないように、虚偽の功績を作って、あなたの評判も高めてあげるわ。そして、いずれはお父上を越える大魔導士に仕立ててあげる。悪くない話でしょ? だから忘れて、ね』
ベッドサイドにあったチェストの引き出しから色鮮やかな棒状の高級飴をひとつ取り出し、まるで犬に餌を与えるように、ベンジャミンに向けてちらつかせるアマンダ妃。
ベンジャミンは無表情のまま手を差し出すと、火魔法で手のひらに熱を生成し、飴に向けて放った。
飴は瞬く間にドロドロになり、アマンダ妃の着ていたシルクの夜着を見るも無残に汚す。
『ひ……っ!』
アマンダ妃は飛び上がるようにしてベッドから起きると、警戒の視線でベンジャミンを睨んだ。
ギイ……。
アマンダ妃の部屋で寝支度を終えた侍女が退室する際、ベンジャミンは風魔法を使い、誰にも気づかれないよう中に忍び込んだ。
カーテンの陰に隠れ、ベッドの上で手鏡を持ち、自らの顔をうっとりと眺めているアマンダ妃を見つめる。
『我ながら素晴らしい魔法だったわね。邪魔な女が消えてくれて本当にせいせいしたわ。次はあの息子の番ね』
鼻歌を歌うようにそう呟いていたアマンダ妃だったが、急にこちらに顔を向け、視線を鋭くする。
『そこにいるのは誰!?』
さすがは巧妙な暗黒魔法を操るほどの高い魔力の持ち主である。
高魔力の者が、人の気配に敏感だというのは本当のようだ。
満を持したように、ベンジャミンはカーテンの陰からゆらりと姿を現した。
全身をこわばらせて警戒していたアマンダ妃だったが、侵入者が大魔導士の愚息と知って安心したのか、肩の緊張を緩める。
『なんだ、あなただったの。どうやって忍び込んだの? 能力もない癖にデズモンドの腰巾着をしているようだけど、やることなすこと鼠のようね』
鼻で嗤うアマンダ妃。
いつもは寛容な女性を演じている彼女だが、人の目がないせいか、はたまたどうでもいいような子供相手だからか、本性を隠す様子がない。
それからアマンダ妃は、急に聖母のようなおおらかな表情になり、『今聞いたことは秘密にしておいてちょうだい』と甘い声を出す。
『デズモンド亡きあとは、あなたをグラハムの側近に据えてあげる。落第魔導士と罵られないように、虚偽の功績を作って、あなたの評判も高めてあげるわ。そして、いずれはお父上を越える大魔導士に仕立ててあげる。悪くない話でしょ? だから忘れて、ね』
ベッドサイドにあったチェストの引き出しから色鮮やかな棒状の高級飴をひとつ取り出し、まるで犬に餌を与えるように、ベンジャミンに向けてちらつかせるアマンダ妃。
ベンジャミンは無表情のまま手を差し出すと、火魔法で手のひらに熱を生成し、飴に向けて放った。
飴は瞬く間にドロドロになり、アマンダ妃の着ていたシルクの夜着を見るも無残に汚す。
『ひ……っ!』
アマンダ妃は飛び上がるようにしてベッドから起きると、警戒の視線でベンジャミンを睨んだ。