9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
『お前、本当は魔法を使えるのね……! 使えるのに使えないフリをするとはなんとこざかしい!』
憎しみのこもった目を向ける彼女の双眸は、まがまがしい魔女そのものだった。
『僕の力は、デズモンド様ただおひとりのために存在するものですから』
ベンジャミンは淡々と言い放つと、再び手を伸ばし、手のひらを目の前の憎き魔女に向ける。
全身に念を込めると、夜の闇よりも深い漆黒のオーラが彼を取り巻いた。
普段は色素を失っている右手首のメビウスの痣が、金色の光を放つ。
鼠同然と思っていた目の前の子供魔導士から放たれるいまだかつてない魔力を目にして、アマンダ妃が蒼白になる。
少年の右手首で光るメビウスの痣を目にした彼女が、震え声を出した。
『お前……まさか、お前が聖人なの……?』
だが彼女が声を出せたのは、それまでだった。
次の瞬間には、常軌を逸した暗黒魔法に脳天を貫かれ、命を奪われていたからだ。
過去に繰り返し暗黒魔法を使った者特有の魔法斑――真っ黒な舌を晒しながら、恐怖に顔を引きつらせて息絶えた彼女を、ベンジャミンは静かに見下ろす。
そしてこの世の何よりも大事な主を救えたことに安堵し、いつもの無邪気な笑みを顔に取り戻したのだった。
「デズモンド様、よかったです。これであなたを救えました」
憎しみのこもった目を向ける彼女の双眸は、まがまがしい魔女そのものだった。
『僕の力は、デズモンド様ただおひとりのために存在するものですから』
ベンジャミンは淡々と言い放つと、再び手を伸ばし、手のひらを目の前の憎き魔女に向ける。
全身に念を込めると、夜の闇よりも深い漆黒のオーラが彼を取り巻いた。
普段は色素を失っている右手首のメビウスの痣が、金色の光を放つ。
鼠同然と思っていた目の前の子供魔導士から放たれるいまだかつてない魔力を目にして、アマンダ妃が蒼白になる。
少年の右手首で光るメビウスの痣を目にした彼女が、震え声を出した。
『お前……まさか、お前が聖人なの……?』
だが彼女が声を出せたのは、それまでだった。
次の瞬間には、常軌を逸した暗黒魔法に脳天を貫かれ、命を奪われていたからだ。
過去に繰り返し暗黒魔法を使った者特有の魔法斑――真っ黒な舌を晒しながら、恐怖に顔を引きつらせて息絶えた彼女を、ベンジャミンは静かに見下ろす。
そしてこの世の何よりも大事な主を救えたことに安堵し、いつもの無邪気な笑みを顔に取り戻したのだった。
「デズモンド様、よかったです。これであなたを救えました」