9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(もしも私のせいで伝聖が途絶えて、聖女がいなくなってしまったら――)

前例がないから確かめようがないが、聖女が途絶えてしまう可能性はある。

セシリアはとりあえず、ナイフを引き出しに戻した。

それから深呼吸をして、再び解決策を探る。

そしてこれまでのループ人生を順に思い浮かべるうちに、あることを思い出す。

そして、目を大きく見開いた。

(あったわ! 生きながら、聖女でなくなる方法が!)

あれはたしか、五度目のループのときだった。

魔法修行の旅に出たセシリアは、山奥の、魔導士ばかりが集う魔法城に滞在したことがある。

おどろおどろしいその魔法城には、禁断の書が眠る書庫があった。

どんなに魔法修行に励んでも火すら起こせないセシリアは、禁断の手を用いてでも魔法が使えるようになりたい一心で、書庫の書物を読み漁ったことがある。

そのとき、エンヤード王国における黒歴史が記載された禁断の文献の中に、聖女に関する記述を見つけたのだ。

そこには、過去に国王との婚約中に不貞を働き、生きながら称号を剥奪された聖女がいたと書かれていた。

婚約の儀は、ダリス神に婚約を誓う神聖な儀。

不貞を働いたら、神への冒涜とみなされ、聖女からただの女へと落とされるらしい。

そして伝聖が起こり、別の者が聖女に選ばれる。

(不貞を働けばいいのよ……!)
 
思い切った方法ではあるが、もうこの道しか残されていない。

投獄されるかもしれないが、伝聖が起こって新たな聖女が生まれるならそれでいい。

(で、でもそれって、エヴァン様以外の誰かとその……、ああいうことをするということよね……)

十代から二十代の間だけではあるが、何度も人生を繰り返しているセシリアには、当然そういった知識はある。

だが、ただの一度も経験がなかった。
< 51 / 348 >

この作品をシェア

pagetop