9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
いつかはエヴァンに触れてもらう日を夢見ていた頃もあったが、今は遠い昔に感じる。

だが、エヴァンを助けたい。

それには、自分が聖女をやめる道――つまり不貞を働くしか方法はない。

セシリアは自らの左手首に浮き出た、聖杯を象った青あざを見つめた。

この聖女の証に、もはや未練などない。

誇りだったこともあるが、そんな気持ちはとうの昔についえた。

自身の操へのこだわりも、人生八度目ともなれば、もはやないに等しい。

そんなものでエヴァンの命を救えるなら本望だ。

だがそこでセシリアは、大事なことに気づく。

「――でも、誰に抱かれればいいの?」




幸いにも今宵は夜会で、いつもは閉ざされている正門が解放されている。

祝宴の間から聞こえる音楽の音色のせいか、正門を守る近衛兵たちもどこかしら浮ついていて、客人が出そろい来なくなったのをいいことに、ふたりで楽しげに話し込んでいた。

(今だわ)
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