9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
まさか諸外国からも信頼を寄せられているその聖女が、目の前のこれといった特徴のない娘で、そのうえ城では役立たずと罵られている実情など、彼らは知る由もないだろう。

(オルバンス帝国……。恐ろしい国だわ)

オルバンス帝国にエヴァンを三回も殺された過去を思い出し、セシリアはぞくっとする。

今回の人生でも、エヴァンがオルバンス帝国に殺される可能性は充分にあるのだ。

なるべく早く、別の者に聖女の称号を譲らないと。

そのためには、自分を抱いてくれる相手を探さなければならない。

正体のバレている城の者が相手だと、拒否されるのは目に見えているし、その者に迷惑がかかる。

だからわざわざ城を抜け出し、町娘のフリをして、不貞相手探しに乗り出したのだ。

(できればすぐに、この国から出て行ってくれるような方がいいわ。事が終わったあと、いなくなっていれば、不貞が明るみになってもその方には迷惑をかけないもの。そうね、外国からの旅人なんか最高だわ)

善は急げとばかりに、セシリアは老人に問いかける。

「おじいさん、お願いがあります。宿屋のある場所を教えてくれませんか?」
 


それから数刻後。

「ふふふ、たのしー。お祭りっていいですねぇ」

宿屋街にある酒場で、セシリアはゴブレットを片手にすっかり酔っ払っていた。

「わたし、お祭りって初めて来たんです。いつもやることがいっぱいで、遊んでいる暇なんかなかったんですよね。通算五十年近く生きてるっていうのにお祭りも知らないなんて、かわいそうだと思いませんかぁ~?」

そんなセシリアを、カウンターの向かいから、店主の中年男が心配そうに見ている。
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