9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ぼんやりとした顔の輪郭や、黒髪であることだけが、かろうじて認識できただけだった。
はっきりと見えたのは、上着のボタンのひとつに彫り込まれた斧の模様だけである。
セシリアは、瞳をわずかに輝かせた。
「あなたは、木こりですね?」
斧といえば、木こりである。
なんだかものすごく見覚えのある絵柄のような気もするが、酩酊した頭では思い出せるはずもなかった。
すると男が、片手で口元をおさえる。
どうやら笑っているようだ。
「? 何がおかしいのですか?」
「いいや。新鮮で面白かっただけだ。いいな、木こりか。彼らのおかげで家があり、町がある。俺は常日頃から彼らに感謝してるし、尊敬もしている」
(どうやら当たったようね)
セシリアがホッと胸を撫で下ろしていると、男がより顔を近づける気配がした。
「君はなぜ木こりに抱かれたい? 察するに、娼婦というわけでもないだろう?」
「それは――」
はっきりと見えたのは、上着のボタンのひとつに彫り込まれた斧の模様だけである。
セシリアは、瞳をわずかに輝かせた。
「あなたは、木こりですね?」
斧といえば、木こりである。
なんだかものすごく見覚えのある絵柄のような気もするが、酩酊した頭では思い出せるはずもなかった。
すると男が、片手で口元をおさえる。
どうやら笑っているようだ。
「? 何がおかしいのですか?」
「いいや。新鮮で面白かっただけだ。いいな、木こりか。彼らのおかげで家があり、町がある。俺は常日頃から彼らに感謝してるし、尊敬もしている」
(どうやら当たったようね)
セシリアがホッと胸を撫で下ろしていると、男がより顔を近づける気配がした。
「君はなぜ木こりに抱かれたい? 察するに、娼婦というわけでもないだろう?」
「それは――」