9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(一生を添い遂げるなら、こんな女がいい)

自分はずっと、気が遠くなるほどの長い間、ああいう女を求めていたのだ。

他人には決して弱みを見せることのできない自分の、唯一無二の心の安らぎとなるような女を。

デズモンドは、彼女が寝ていた敷布にそっと触れる。

まだ、微かに温もりが残っていた。

彼女の残滓を優しく撫で、碧空の瞳に力を込めてつぶやく。

「待っていろ。必ず見つけ出す」



デズモンド・カルディアン・オルバンスは、大陸一の規模を誇るオルバンス帝国の皇太子だ。

母違いの兄と姉がいるが、姉は国内の高位貴族にすでに嫁いでおり、大人しい兄は政治の才を示さず、デズモンドは最年少でありながら次期後継者に任命された。

番狂わせの皇位継承は、彼が十五に満たない頃から、父とともに戦場に出ていたことに発する。

闘い好きは、生まれつきの性分だった。
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