9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
あのときの胸を打つような衝撃を思い出し、エヴァンは舌打ちをした。

どうして王太子であり、彼女よりも上の立場にいる自分が、あんな思いをしなくてはいけないのだ。

たとえ選ばれし聖女といえども、彼女はエヴァンより格下の存在。

いつもエヴァンの機嫌をうかがい、愛される努力をして、うまくいかずに傷つけられているくらいがちょうどいいのだ。

(俺とセシリアは、ダリス神の前で婚約を誓った間柄。婚約破棄など、神に背くも同然の行為だ。できるわけがないだろう?)

天変地異が起ころうと、自分とセシリアの結婚は覆らない。

エヴァンはここエンヤード王国の王太子であり、セシリアはエヴァンを幸運に導くために存在する聖女なのだから。

彼女はエヴァンのために生まれ、エヴァンに愛を乞い続ける宿命なのに。

(ああ、イライラする)

婚約破棄発言の衝撃が尾を引いて、まったく夜会を楽しめなかった。
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