9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアには幾度となく嫌な気持ちにさせられたが、今回ほどのことはない。

もう一度髪をクシャリとやり、どうにか苛立ちをやり過ごそうとする。

そのとき、扉の向こうから騒々しい足音がした。

「エヴァン殿下、至急、お目通りを!」

侍従長の声である。

いつも落ち着いている彼にしては珍しく、ひどく狼狽しているようだ。

「入っていいぞ」

頭痛をこらえ、エヴァンは涼しい声で返事をする。

エヴァンは基本、セシリア以外には誰にでも優しい。

セシリアだけが、彼をいつも不快にさせるのだ。

「失礼いたします……!」

侍従長が、転がり込むようにして部屋に入り、ベッドの上にいるエヴァンに向かってうやうやしく頭を垂れた。

全速力で走ってきたのか、肩が激しく上下している。

「そんなに急いでどうかしたか?」

「先ほど、新聖女様が現れたとの報告がありました」
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