9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「最高司祭が来たようです。詳しい話は彼からお聞きください」

侍従長は気まずそうな顔を見せると、早々に部屋から退散した。

入れ替わるようにして、生成りの修道服を着た、高齢の最高司祭が現れる。

ダリス教に根付くこの国には、いたるところに、ダリス神の彫像を祭った教会が点在している。

とりわけ王都にある教会は、見事なゴシック建築で、成人男性五人分ほどの高さのある巨大なダリス神像は、この国きっての観光名所にもなっていた。

最高司祭は普段はそちらに在中しており、城の要事にはいち早く駆けつける決まりになっている。

部屋の入口で立ち止まった最高司祭は、いまだベッドの上で唖然としているエヴァンに向かって深々と敬服の礼をした。

「エヴァン殿下、明朝から失礼いたします。この度は、新聖女のご誕生、おめでとうございます」

祝福して当然の事柄のように、最高司祭が晴れやかな笑顔を見せる。
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