9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
心が温かくなって、エヴァンは自然と笑い声を響かせていた。
『ダリス神は聖人を遣わさないよ。遣わすのは聖女だ。聖人は異教の使者だね』
――あれは、エヴァンの初恋だった。
エヴァンはすぐに、彼女がランスロ―子爵家の令嬢であることを知った。
見目麗しく出来のいい妹とは違い、彼女は粗野でわがままで、ランスロ―子爵夫人を困らせてばかりの問題児らしい。
(とてもではないが、そんな風には見えなかった)
いかに悪評が立っていようと、あの天使のように愛らしい少女を自分のものにしたいという気持ちは、次第にエヴァンの中で膨らんでいった。
子爵令嬢であれば、正妃の座は無理だろう。
だから、正妃を迎えたあとで側妃にすればいい。
(そうなる前に彼女に縁談が来ないよう、早めに父上に話を通そう)
そう思っていた矢先に、思いがけない出来事が起こる。
聖女であるエヴァンの祖母が他界し、伝聖が起こって、セシリアが新たな聖女になったのだ。
そして年が近くまだ未婚だからという理由で、エヴァンの婚約者に選ばれた。
長いエンヤード王国の歴史において、聖女を娶った王の代は、栄華を極める。
だが聖女を伴侶にした際は、側妃を迎えてはならないという教会の決まりがあった。
(僕はなんて幸運なんだ)
聖女を伴侶に迎えることのできる王は、ただでさえ幸運だ。
しかもその相手が初恋の少女だったなど、これ以上の幸せはない。
エヴァンは、婚約者として城に上がったセシリアを大事にした。
思った通り彼女は、ランスロ―子爵夫人が吹聴していたような、粗野でわがままな少女などではなかった。
健気で、聡明で、飾らない愛らしさがあり、そして何よりも頑張り屋だった。
『ダリス神は聖人を遣わさないよ。遣わすのは聖女だ。聖人は異教の使者だね』
――あれは、エヴァンの初恋だった。
エヴァンはすぐに、彼女がランスロ―子爵家の令嬢であることを知った。
見目麗しく出来のいい妹とは違い、彼女は粗野でわがままで、ランスロ―子爵夫人を困らせてばかりの問題児らしい。
(とてもではないが、そんな風には見えなかった)
いかに悪評が立っていようと、あの天使のように愛らしい少女を自分のものにしたいという気持ちは、次第にエヴァンの中で膨らんでいった。
子爵令嬢であれば、正妃の座は無理だろう。
だから、正妃を迎えたあとで側妃にすればいい。
(そうなる前に彼女に縁談が来ないよう、早めに父上に話を通そう)
そう思っていた矢先に、思いがけない出来事が起こる。
聖女であるエヴァンの祖母が他界し、伝聖が起こって、セシリアが新たな聖女になったのだ。
そして年が近くまだ未婚だからという理由で、エヴァンの婚約者に選ばれた。
長いエンヤード王国の歴史において、聖女を娶った王の代は、栄華を極める。
だが聖女を伴侶にした際は、側妃を迎えてはならないという教会の決まりがあった。
(僕はなんて幸運なんだ)
聖女を伴侶に迎えることのできる王は、ただでさえ幸運だ。
しかもその相手が初恋の少女だったなど、これ以上の幸せはない。
エヴァンは、婚約者として城に上がったセシリアを大事にした。
思った通り彼女は、ランスロ―子爵夫人が吹聴していたような、粗野でわがままな少女などではなかった。
健気で、聡明で、飾らない愛らしさがあり、そして何よりも頑張り屋だった。