9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ポタリと、拳から血のしずくがしたたり落ちた。
あまりにも強く握ったせいで、出血したらしい。
――ガンッ!
構わず、エヴァンは血まみれの拳を壁に打ちつける。
あまりの衝撃に部屋全体が揺らぎ、壁にかけていた額縁が落下した。
(許してなるものか)
不貞を働いたセシリアにも、もちろん湧き立つような怒りを感じている。
だがそれ以上に、相手の男が許せない。
(どこの誰だ? 城住まいで、男と知り合う機会などなかったはずなのに)
ギリッと歯を食いしばる。
あの白くて華奢な体に他の男が触れたかと思うと、とてもではないが正気ではいられなかった。
少女の頃からずっとエヴァンひとりのものであり、かといって絶対に触れてなどやらない特別な存在だったのに。
彼女は、エヴァンに愛されず、必死に愛を乞い続ける宿命なのだ。
そういうみじめな星のもとに生まれ、死んでいかねばならなかった。
「――相手の男の首を刎ねてやる」
地を這うような声で唸ると、エヴァンは壁に掲げていた剣を腰に差し、謁見の間めがけて突進する猛獣のごとく部屋を飛び出した。
あまりにも強く握ったせいで、出血したらしい。
――ガンッ!
構わず、エヴァンは血まみれの拳を壁に打ちつける。
あまりの衝撃に部屋全体が揺らぎ、壁にかけていた額縁が落下した。
(許してなるものか)
不貞を働いたセシリアにも、もちろん湧き立つような怒りを感じている。
だがそれ以上に、相手の男が許せない。
(どこの誰だ? 城住まいで、男と知り合う機会などなかったはずなのに)
ギリッと歯を食いしばる。
あの白くて華奢な体に他の男が触れたかと思うと、とてもではないが正気ではいられなかった。
少女の頃からずっとエヴァンひとりのものであり、かといって絶対に触れてなどやらない特別な存在だったのに。
彼女は、エヴァンに愛されず、必死に愛を乞い続ける宿命なのだ。
そういうみじめな星のもとに生まれ、死んでいかねばならなかった。
「――相手の男の首を刎ねてやる」
地を這うような声で唸ると、エヴァンは壁に掲げていた剣を腰に差し、謁見の間めがけて突進する猛獣のごとく部屋を飛び出した。