彼の指定席
「ここってさ、ペペロンチーノないの?」
「……いえ、ございませんが」
素っ気無い返事をしてしまうのは、どうしてだろう。
精一杯の強がりなのかな。
「ないんだー。そっかぁ、残念。俺、ペペロンチーノが一番好きなんだけどな」
残念そうに言う彼に、あたしは、とてつもなく意地悪なことを言っちゃったんだ。
「すぐ近くのパスタ専門店に行かれたらどうですか? そこでしたら、ペペロンチーノも、うちの店と同じ値段のパスタランチもありますし」
――あたし……なに言ってんだろ。