若い身空で老人と結婚することになりましたが実は呪いをかけられた王子様でした
教会の前には、すでに小さな荷馬車が横付けされており、御者席にはロバの手綱を持ったトムがいつでも出発出来るよう、座って待っていた。

「お待たせしました。」

と、マリーはトムに言った。トムは、

「どうぞ、マリーさん。」

と言って手を差し出すと、マリーに荷台に乗るよう促した。

マリーが荷台に乗り込むと、

「マリー、元気で。」

と、神父さまが言った。神父さまとマリーは両手でお互いの手を握りながら、

「神父さま、長い間大変お世話になりました。この御恩は一生忘れません。」

と、マリーが言った。

「こちらこそ、教会を救ってくれてありがとう、マリー。どうか幸せに。トムさん、マリーの事をくれぐれもよろしくお願いします。」

と、神父さまが言った。

「はい。」

と、トムは答えた。

そして、トムが手綱を大きく動すと、ロバがゆっくりと歩きだし、荷台がゴロゴロと動き出した。

「マリー!!元気でね~!!」

と、リリアンが叫んだ。負けじとマリーも叫んだ。

「リリアンも~!!みんなによろしくね~!」

マリーは、手の甲で零れ落ちる涙をぬぐった。孤児院の子供たちは学校に行っている時間帯なので、お別れは出来なかったが、敢えてこの時間帯を選んだのはマリーだった。子供たちの顔を見たら、嫁ぐ勇気が削がれると思ったからだ。

『子供たちには申し訳ないことをしたけれど、またすぐに教会に手伝いに行くつもりなので、会えなくなるわけではない。きっと分かってくれるだろう。』

と、マリーは荷馬車に揺られながら、考えていた。
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