しづき


心臓がはやくなる。呼吸が荒くなる。



うるさく鼓動する場所を必死に押さえつけた。





「…ぼくはね、汐月が苦しんでいるのをこれ以上見たくないんだ。このままいけばきっと…

汐月はホントーに死んじゃう」





その声音は私の苦しみを代弁しているようだった。



まるで同じ思いを味わったかのように。



すると男は「だからさ」と体ごとこちらに向ける。





「1ヶ月、汐月の時間をぼくにちょーだい」





あまりに突然の言葉。



つい「え」と素っ頓狂な声が漏れてしまった。





「汐月が死なないよーに、このぼくがめいっぱい愛してあげる」





男はふんわり笑う。


< 20 / 312 >

この作品をシェア

pagetop