しづき


「汐月…ごめん、先に出てて」


「え、白の髪まだ洗って…」


「自分で洗うからいーよ。
それより、ぼくの体が悲鳴をあげてるから」


「?」



よく分からなくて首をかしげる。



「ほら、早く出な。
お風呂場で初めて奪われたくないでしょ」


「な、なにをっ?!」


「そーゆーことなの。
イヤなら早く出てってくだちゃい。
出ていく際はぼくのこと見ないでね。
ぜったい引かれるから」



稀に見るほど頑なな白。



私は仕方なく、言われるがまま浴室をあとにした。



そして数十分後
白はやたらスッキリした顔で出てきて、何事も無かったように私の髪を乾かした。



「白、体は大丈夫なんですか?」


「うん、まーだいじょーぶ」


「なんだったんですか?」


「オトコノコにはいろいろあるの」



なんてはぐらかされてしまった。



まだ釈然とはしないけど、温風と共に触れてくる指がやわらかくて心地よくて。



今度はお母さんに髪を乾かしてもらった記憶なんて思い出しながら



私の中のやさしい部分を、そっと心の奥にしまった。



どうしたって白という人間はあたたかい。



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