しづき



「───い、おい」




なにか…声が聞こえる。



おぼろげな意識の中、重たいまぶたを開く。





目の前に──人がいた。





「ん……しろ?」



帰ってきたのかな?
私、いつのまにか寝ちゃったんだ。



なんて、呆れるくらい冷静な脳みそに
再び声が降ってくる。





「ふっ…しろってアイツのことか?
気色わりぃ。早く起きろ」





気色悪い?
白はそんなこと言わない。



私の知っている白よりもずっと声が低いということに気づき、冷や水をかけられたように意識が覚醒した。





消したはずの灯りがついている。


そこに浮かび上がるのは…黒髪。



──知らない男の顔だった。





「だ、だれ?!」



勢いよく跳ね起きる。



< 223 / 312 >

この作品をシェア

pagetop