イノセント*ハレーション
ウサギの小屋を掃除して、弓木くんと多少の情報交換をして、あたしは学校を後にした。

自宅の最寄り駅の1つ前で降り、そこから少し歩いたところに目的地はある。


ーーピロリロリロリ...。


自動ドアはいつだって妙に明るいテンションであたしを出迎える。

あたしはレジにいたチャラ目の先輩男性バイトに"おはようございます"と挨拶をしてから事務所に入った。

事務所にはパソコンとにらめっこの女性店長が1人いるだけで、他には誰もいない。

事務所兼ロッカーでもある場所で、あたしは早着替えを済ませ、タイムカードを切り、レジに立った。

時刻は17時30分。

そして22時まで怒涛のバイトタイムが始まる。


「凪ちゃん今日も超可愛いね~」


この人と一緒になると毎度のことながら、可愛いとは到底思えない女子に可愛い可愛い言うのはどうかと思う。

面倒くさいので決まり文句で耐え忍ぶ。


「そりゃどうも」

「その塩対応がたまんないんだよね~。ねえ、今度一緒にカラオケとか...」

「何度もお断りしておりますが、行くつもりないので」

「いやいや、そんなこと言わずに~」


と、大学生にもなって彼女の1人も作れない残念な男性は軽くあしらっておいて、あたしは真面目に働く。

家族の幸せと少しばかりの自分の自由のため。

それがあたしの働く理由。

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