Rain or Shine〜義弟だから諦めたのに、どうしたってあなたを愛してしまう〜
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 タクシーから降りた瑞穂は、自分がパーカーにデニム姿であることが恥ずかしくなる。家から出ないと決めた日は化粧もしなかったので、今の自分が散々な姿であることはわかっていた。

 それでも恵介は何も気にしないような素振りでエレベーターに向かう。その間もずっと手を握られたままだった。

 到着したエレベーターに乗り込み、恵介は八階のボタンを押す。モーター音だけが響き、静かに時間が過ぎていく。

 一体何が起こっているのだろう……。どうして私は恵介と一ホテルに来ているのだろうか。

 エレベーターが止まり、恵介に手を引かれ歩いていく。八○五号室のドアの前で立ち止まり、カードキーを差し込んだ。部屋の中へと招かれ、おずおずと足を踏み入れる。

 駅前にあるこのホテルからの眺めは、もう何年も見続けて来た変わり映えのない景色だった。それなのにどうしてか、今日はいつもより輝いて見えた。

 窓辺に近寄り、空を眺めながら立ち尽くす。ホテルなんていつ以来だろう。体に痣が目立つようになってから、崇文は旅行に行こうとはしなくなった。ホテルで食事すらもなく、休みの日でさえ家にいるだけの生活だった。
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